ファジィ演算
実際に「ファジィ」を使おうと思ったら、ファジィで表わされたものを何らかの計算ができないと意味がありませんね?そこで、ここではファジィ集合の演算について紹介したいと思います。よく用いられる演算はAND演算、OR演算、NOT演算があります。それではこれから各演算について説明します。
AND演算(積集合、かつ)と書きます。
式はとなります。
図3.1 AND演算
AND演算は「AでありかつBである」という意味です。したがって、AND演算ではAとBの両方の重なる部分の集合が積集合として求まります。
例えば、二人の人が快適に感じる気温というのは「Aさんが快適と感じる温度」と「Bさんが快適と感じる温度」の「AND演算」によって求めることができます。上の図で考えると、横軸を気温でとり、Aを「Aさんが快適と感じる温度」、Bを「Bさんが快適と感じる温度」とします。するとグレーの部分が「二人とも快適と感じる温度」になります。また、A、Bはファジィ集合なので、気温に対するそれぞれの人の快適な度合をあらわしています。したがって、AとBの積集合は「二人とも快適の感じる温度」の度合をあらわしています。
OR演算(和集合、または)と書きます。
式はとなります。
図3.2 OR演算
OR演算は「Aであるかまたはである」という意味です。したがって、OR演算ではAとBの両方をたしあわせた集合が和集合として求まります。
例えば、AND演算のときの例を用いると、こんどは「AさんかBさんのどちらか一方が快適と感じる温度」が「OR演算」により求まります。求まった和集合はどちらか一方の人がどれだけ快適に感じているかの度合をあらわすファジィ集合としてとることができます。
NOT演算(補集合、否定)やなどであらわします。
(ここではを使うことにします)
図3.3 NOT演算(補集合)
NOT演算は「Aでない」という意味です。ファジィ集合における否定には、いくつかの種類が提案されています。有名なところでは、ザデーの否定、直観主義の否定、-補集合などがあります。図7はザデーの否定といわれるものです。ザデーの否定では、メンバーシップのグレード値は要素がその集合(概念)に属する度合をあらわすと考え、グレード値が1なら、100%属する、グレード値が0なら全く属さない(0%属する)としています。したがって、ザデーの否定の式は となります。
ザデーの否定は基本的には直感的に考えた否定と一致するのですが、いくつかの点で違和感を感じるところがあります。まず、「Aである」と「Aでない」が両立する場合があります。図7でみると、二つの集合が重なる部分(下側に二つできている三角形)がこれにあたります。つぎに、2重否定の問題があります。ザデーの否定では2重否定はもとの集合に戻りますが、実際にはどうでしょうか?例えば、「背が高くないことはない」という2重否定を考えてみると、「背が高い」を2回否定していることになりますが、意味としては「背が高い」にはなりませんよね?普通は「背が高くないことはない」といわれたら「ほどほどに背が高い」といった様子を思い浮かべるのではないでしょうか。
直観主義の否定はこの二つの性質を満たす否定形式です。直観主義の否定ではAでないということは、A以外なら完全に真、Aの範囲では完全に偽という形態をとります。式で書くと、
となります。グラフ化すると図8のようになります。ただし、Aの範囲では0になります。つまり、二値論理の否定と同じと言えます。
図3.4 直観主義の否定次にその他のファジィ演算を紹介します。
代数和、代数積代数和、代数積はOR演算、AND演算を代数計算のように求めようという演算法です。記号は代数和がで、代数積がとなります。
AB=A+B−ABAB=AB
限界和、限界積
限界和はファジィ集合の和をとり、1を越えるときは上限を1としてとどめます。限界積はファジィ集合の和から1をひき、0を下まわるときは下限を0としてとどめます。記号は、限界和がで、限界積がとなります。
AB=(A+B)1AB=(A+B−1)0
激烈和、激烈積
激烈和は二つのファジィ集合の、両方が0でなければ(A>0かつB>0)1となり、もし片方が0なら、もう一方の値が残ります。激烈積は二つのファジィ集合の、両方が1でなければ(A<0かつB<0)0となり、もし片方が1なら、もう一方の値が残ります。記号は激烈和がで、激烈積がとなります。
AB=B(A=0のとき)A(B=0のとき)
1(A、B>0のとき)
AB=B(A=1のとき)
A(B=1のとき)
0(A、B<1のとき)