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ファジィ測度

ファジィ測度の前に

ファジィ測度について扱う前に「測度」について簡単に扱いたいと思います。そもそも、測度といわれてもピンとこないかもしれません。測度とは、文字どおり測る度合のことです。つまり、ある対象を測るために用意する、共通の単位のようなものと思ってください。例えば、ある物体を測るとき、物体の、長さ、面積、体積などが一つの尺度として用意できます。このような概念のことを測度といいます。

測度(加法的測度)の定義は、

1.空集合の測度は0となる。
2.集合Aが集合Bの部分集合ならば、Aの測度はBの測度よりも小さい。(単調性)
3.集合Aと集合Bの積集合が空集合ならば、AとBの和集合の測度はAの測度とBの測度の和に等しい。(加法性)

と言うものになります。それでは、この定義について順に説明してみたいと思います。

はじめに1.は、何も無いものに対しては大きさなどの定義はできませんから、測度も0になります。具体的な例をあげると、長さを測度として用いる場合、何も無い状態に対しては大きさなども無いわけですから0になって当然というわけです。

次に単調性は、プリンを例に説明したいと思います。集合Bがプリン全体で、集合Aがそこからすくい取ったスプーンの上のプリンと考えてください。測度を体積とすると、AはBの一部な訳ですからBの体積がAの体積よりも大きくて当たり前です。

最後に加法性ですが、これは二つのプリンA、Bがあると思ってください。測度は、体積とします。すると、「集合Aと集合Bの積集合が空集合ならば」というのは、二つのプリンを用意したわけで、その二つに体積の共通している(重なっている)部分は無いわけですから(当たり前ですね)すでに条件は満たされています。そして「AとBの和集合の測度」というのは、AとBを合わせた全体の体積のことです。「Aの測度とBの測度」はAの体積とBの体積のことですから、これの和が「AとBの和集合の測度」と等しいというのも納得できると思います。

先程あげた、長さ、面積、体積などはこの条件を満たしており、加法的測度と言えます。

ファジィ測度

それでは、本題に入りたいと思います。ファジィ測度とは、あいまいな測度ということになります。先に結論からいうと、ファジィ測度は加法性の成り立たない測度のことです。つまり、1+1=2とならない測度のことです。

例えば、太郎、次郎、三郎の3人の会社員がいて仕事をするとします。このとき、一人で仕事をする場合に一日に処理できる量が50としたとき、二人で仕事をすると処理できる量は100でしょうか?三人で仕事をすると処理できる量は150でしょうか?現実の世界ではそうとは限らないと思います。三人で協力することで200の仕事をできるかもしれません。逆に、仕事の種類によっては、一緒にやっても能率が上がらず、三人でやっても100しかこなせないかもしれません。

このように、現実世界における測度というのは、必ずしも加法的であるとは限りません。ただし、このような場合でも、単調性は成り立つことが多いです。そこで、ファジィ測度では、

1.空集合の測度は0となる。
2.集合Aが集合Bの部分集合ならば、Aの測度はBの測度よりも小さい。(単調性)

という、二つの条件を満たすときに成立します。ファジィ測度においては、2つ以上の集合の測度(上の例では二人以上の会社員が協力する場合の測度)がそれぞれの集合の測度の単純な和よりも大きくなるとき、相乗作用があり、単純な和よりも小さくなるとき、相殺作用があると考えられます。また、単純な和と等しくなるとき、集合は互いに独立であると考えられます。こうしてみると、加法的測度というのは、ファジィ測度において、集合が独立である場合であるといえます。つまり、ファジィ測度は加法的測度の拡張であるといえるわけです。

具体例を一つ示してみます。先程の三人の会社員の例を完成させてみましょう。ここでは、太郎が一番能率よく仕事をこなし、その次に次郎、最後に三郎という順位だとします。また、一郎と次郎はいまいち息が合わず、仕事の能率はいまいち上がりません。反対に一郎と三郎では大変能率が上がり仕事をたくさんこなすとします。また、次郎と三郎とでは能率は特別変わらず、淡々と仕事をこなします。また、単調性は成り立っているわけですから、当然三人で仕事をする場合、一番仕事がはかどります。

この情報をもとに、測度を決めるわけですが、ファジィ測度は通常[0,1]の範囲で値を定めるので、三人で協力する場合が最大なので、1.0とします。以下、下のように定義できます。

{太郎、次郎、三郎}=1.0
{太郎、三郎}=0.9, {次郎、三郎}=0.6, {太郎、次郎}=0.6
{太郎}=0.5, {次郎}=0.4, {三郎}=0.2

この例では、基本的に加法性が成り立っていません。ただし、次郎と三郎の二人の場合だけ単純な加法的測度が成り立っています。このように、ファジィ測度では加法的測度を取り込んでいるため、加法的な関係と非加法的な関係とを同じ測度の中に収めることができるわけです。しかし、欠点もまたあります。何より、上の例でもわかることですが、測度が客観性を失ってしまう危険があるわけです。上の例では、完全に主観のみで測度を定めているわけですから、そういう意味では裏づけのない測度といわれてしまうかもしれません。客観的にファジィ測度を決める手法としては、統計を用いる手法や、AHPを利用する方法など様々なものが提唱されています。

ファジィ測度では、人間の直感的情報を具体的な測度として表すことができる半面、そのために、主観に頼ってしまう危険などもあり使い方には気をつけなければなりません。

1999/09/17