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1.人工知能とは

人工知能とは、もともと機械に知的なふるまいをさせようという目的で始まった研究分野です。つまり、人工知能とは「考える機械」を作ることを目的としているといえるでしょう。

では、考える機械とはどういうものを言うのでしょうか。

考えるということは、ある種の情報処理ということができるでしょう。簡単な計算から、さまざまな問題に対し、問題を認識し、推理や判断を行ったり、知識を学習したり整理する能力などさまざまなものが考えられます。このため、人工知能の研究は、さまざまな分野の研究を派生させていきました。認知科学(Cognitive Science)や、知識工学(Knowledge Engineering)などは、その代表格です。また、ニューラルネットワークの研究も、もともとは、人工知能の研究の一環でした。(考える機械という意味では今でも同じ目的ですね。)

それでは、次に人工知能の応用分野について紹介してみたいと思います。代表的なところでは、ゲームやパズルへの応用、定理証明、エキスパートシステム、自然言語理解などがあります。

ゲームやパズルへの応用は、チェスや、囲碁、将棋などのゲームと行うものです。おそらく、これがもっとも身近な人工知能ではないでしょうか。この分野では、すでにIBMの並列コンピュータがチェスの世界チャンピオンに勝っていますね。

ゲームやパズルの問題を解くためには、非常にたくさんある選択肢の中から、もっとも有効な答えを素早く探し出すことが目的です。つまり、答えの探索が主な手段となります。

定理の証明とは、数学の定理をコンピュータによって自動的に証明させようという研究です。つまり、与えられた公理を使って、推論を行い目当ての定理を導きだそうというものです。

自然言語処理は、コンピュータによる自動翻訳や、コンピュータとの会話による指示などの実現を目指した研究です。自然言語処理には、意味の理解が必要ですが、知識の利用が不可欠となります。

エキスパートシステムというのは、特定の分野の専門家の知識をデータベースとして組み込み、このデータベースを用いた推論を行うことで、さまざまな問題を解決するシステムのことです。

また、このほかにもさまざまな分野で応用が行われています。以上のように人工知能の主な目的は、さまざまな形での問題解決といえます。一般に、「問題解決」は、探索、推論、知識、学習などに分けることができます。ここで、探索、推論、知識というのは、上にあげた例でなんとなく想像がつくかと思います。また、学習というのは、出来上がったシステムが、新しい知識を自分で整理しながら貯えていくことです。人工知能には、これらの要素を場合に応じてうまく組み合わせて行くことで、さまざまな問題を解決していくことが期待されています。

続いて、人工知能の歴史についても簡単にふれてみたいと思います。

人工知能研究の歴史は、計算機の研究の歴史と言ってもいいでしょう。人工知能の実現に計算機の存在は不可欠ですから、これは当然なのですが。

1936年に、Turing(チューリング)は「計算可能数について - 決定問題への応用」という論文で、チューリング・マシンと呼ばれる抽象万能計算機を提案しています。これは、アルゴリズム(プログラム)に従ってデータ列を処理する装置で、機械的な計算というものを明確な形で表しています。Von Neumann(フォン・ノイマン)の計算機の考えかたは、基本的にこのチューリング・マシンに準じています。

1943年には、McCulloch(マッカロ)とPitts(ピッツ)が「神経活動に内在する概念の論理的計算」という論文で、神経細胞のモデル化を行っています。これはのちにニューラルネットワークに発展していきます。

また、1948年にWiener(ウィナー)が発表した「サイバネティクス」(Cybernetics)は、人工システムと生体システムは、情報と制御という観点からみれば、同じように考えることができると言っています。つまり、人工システムでも、生体システムのような複雑なものが作れると言ったわけです。

このように計算機と知能という形で研究が進みます。神経細胞の研究はニューラルネットワークの分野として独立し、人工知能研究の本流としては、アルゴリズム的な研究へと進んでいきます。

このような流れの中、1956年にLT(Logic Theorist)が完成します。これは、「数学原論」(Principia Mathematica)に示された定理のいくつかを証明できたそうです。また、これに続き一般問題解決システムGPS(General Problem Solver)が開発されました。これは、複雑な問題の解決の方法は、より簡単な問題の解決法の組み合わせにより構築できるという考え方で作られています。

LTとGPSはリストを用いることで処理を行っていますが、リスト処理を行うための一般化言語であるLISP(LISt Processor)が1958年にMcCarthy(マッカーシー)によって開発されました。これは、記号処理能力に優れた言語で、人工知能プログラミングによく利用されます。

一方知識の利用という面での研究は、言語処理、認知、空間の把握、エキスパートシステムといった方向へ発展していきました。エキスパートシステムの代表的なものとしては、以下のようなものが開発されました。

 DENDRAL : 化合物の分析システム
 MYCIN : 感染症の診断と治療に関するコンサルテーションシステム
 PROSPECTOR : 地質学的に見た採鉱有望地の評価支援システム
 CASNET : 緑内症の診断システム
 R1 : VAX-11コンピュータのシステム構成システム

以上のように、人工知能の研究は、実に多彩な分野に進んでいます。しかし、人工知能は基本的に記号処理を中心に処理を行うため、情報量が少ないときの推論や、新しい知識の学習における問題など、さまざまな難問があります。現在では、単純な記号処理では限界があることが指摘されており、さまざまな解決策が研究されています。

ファジィ理論や、ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズムなども、この限界を破るための有力な解決策となるのではないでしょうか。

1999/10/27